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特急案件における「見積金額」の認識相違とキャンセル事例

特急案件における「見積金額」の認識相違とキャンセル事例

ポイント

製造現場において「特急対応」は、信頼関係とスピード、そしてコストのバランスで成り立っています。

今回は、九州のお客様からご依頼いただいたフルコースの加工案件で発生した、見積金額の「桁数見落とし」による受注キャンセルの事例をご紹介します。

1. ご依頼の概要:短納期・高難度のフルコース加工

九州のお客様より、立会検査に間に合わせるための特急案件として、以下の内容でご相談をいただきました。

  • 製品:ステンレス製・箱状の精密板金
  • 工程:レーザーカット ➡ 曲げ ➡ タップ加工 ➡ レーザーマーキング
  • 数量:4種類 × 各10個(計40個)
  • 納期:実質10日間

この納期は、材料手配を即日行わなければ到底間に合わない、非常にタイトなスケジュールでした。

2. 見積価格の背景:特急料金の「内訳」

弊社としても、他の案件の工程調整や人員の再配置を即座に行う必要があり、見積金額は通常よりも高めに設定させていただきました。

その内訳には、単なる加工賃だけでなく、以下の「目に見えないコスト」が含まれています。

1. 工程調整・特急手配料:既存ラインを組み替え、人員を再配置する調整コスト。

2. 時間外労働費:納期遵守のため、残業や休日出勤を前提とした体制構築。

3. 試作・検証コスト:箱状製品特有の「曲げ精度」を確認するための試し曲げ工程。

4. 物流バックアップ:万が一の配送遅延に備え、最悪の場合は新幹線で持参する等の予備費。

3. スピード優先の落とし穴

お客様からは「すぐに振り込むので、一刻も早く着手してほしい」との力強いお言葉をいただき、弊社もそれに応えるべく材料発注の最終準備に入りました。

しかし、お支払い決済用のメールを送付した直後、お客様から一本の電話が入ります。

「すみません、見積金額を一桁見落としていました……」

お客様は、これだけの工程と特急対応を「4桁(数千円〜1万円未満)」の金額で対応可能だと誤認されていたようでした。

結果として、ご予算との乖離が大きすぎたため、この案件は注文取り消しとなりました。

4. まとめ:特急案件こそ「数字」の再確認を

「立会検査にどうしても間に合わせたい」という切実な想いに応えるべく、こちらも最大限の準備を進めていただけに、非常に残念な結果となりました。

今回の教訓:

  • 特急案件ほど「桁数」と「総額」の念押しが必要
  • 「すぐやってほしい」という焦りが、冷静な判断を鈍らせる可能性がある
  • 加工側は、高額になる理由(付加価値)を明確に提示し続ける

スピードが求められる場面こそ、お互いの認識にズレがないか、一呼吸置いて確認することの重要性を痛感した事例でした。

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